こんにちは、やなべです。
アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチに、点と点をつなぐという話があります。その中に次のような箇所があります。
将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。
この言葉には、大変勇気づけられます。今やっていることが将来の役に立つかなんてことは分からないから、役に立つと信じて行動するしかないという意味に取れます。ジョブズは、自分が価値があると思うものを作り続けたのですが、それが消費者に受け入れられたというところに、天才のゆえんがあると思います。時代に選択されるものを作るためには、時代の流れを見極めて未来を予測する必要があります。天才でない私たちは、やはり何らかの方法を学ぶことになります。
未来を予測するには、過去からの社会の進化のパターンを捉え、その流れを線としてつなげることが必要です。パターンを捉えていると、他の人には関連のない点でしか見えないものが、予測可能な線として見えてくるのです。例えば、近代以前の封建制は血のつながりを社会システムの基礎としていました。ところが、このシステムは王政に対する革命により崩れ、近代の自由と平等を基礎とした民主主義になりました。この仕組みができた頃は、情報の伝達コストが高かったため、ハブ型と呼ばれる中央集権の仕組みになりました。そして、インターネットが発達した現代においては、情報を集める必要がなくなり、分散型の社会に移行していくことになります。
未来を先回りするために重要なことは、次の3つです。
- 常に原理から考える
- テクノロジーの現在地を知る
- タイミングを見極める
まずは、原理から考えることです。原理から考えるためには、社会がどんな必要性を満たすために生まれたのかを、歴史を踏まえて考える必要があります。先ほどの民主主義の例で言えば、なぜ中央集権型の社会になったのかを考えたときに、当時の情報コストの高さの中で、最も効率的な統治方法だったからという理由があり、そこから現代の情報コストの前提に変わったときにどう社会が変わるのかを予測することができます。次に、テクノロジーを知ることが必要ですが、そのためにはやはりそのテクノロジーがどのような課題解決のために生まれたのかを理解することになります。そして、最後のタイミングを見極めることが最も難しいのですが次で説明します。
タイミングを見極めるためには、必要なリソースを調達する必要があります。それは資金だったり、スキルだったり、人脈だったりするのですが、それを揃えて行動するタイミングが遅くなると、競合が増えてしまいます。逆に早すぎると、これらのリソースが揃わないという状態になります。ここで重要になるのが、パターンを認識するまで試行を繰り返すことです。物事がうまくいかないのは、この試行回数が足りない場合がほとんどです。また、将来的に新しい情報が得られるであろうことを考慮に入れた上で、一定の論理的な矛盾や不確実性をあえて許容しながら意思決定することも必要です。時間の経過とともに自分の能力も向上することも判断材料に入れる必要があります。自分の納得感よりも、パターンから考えて得られた回答を優先するのです。
読了後の正直な感想として、私はまだまだ実感を得るには経験不足だなと思いました。なんとかまとめてみたものの、私が理解できる範囲では次のようなことが要点になります。
- まず歴史を知ることから始まり、解決してきた課題を明らかにする。
- その上で、歴史と現状の延長に未来を予測する。
- 行動する際は、試行を繰り返して見つけたパターンをもとに判断をする。
本書はテクノロジーの進化と未来の予測について述べられていましたが、この方法は一般にも当てはまります。何かを生み出そうと思うなら、まずは先人がその分野で解決してきたことを学び、その上で現状を観察することから始めなければなりません。一見、当たり前のようにも思えますが、私自身、インターネットの情報で現状の観察はできるものの、歴史については分かっていない部分が多いと思いました。また、試行を重ねていくことの大切さも改めて認識することができました。失敗を前提に、一喜一憂せずに試行を繰り返すこと、うまくいかないときは試行が足りてないことが多いことは、頭に入れておきたいところです。