川端康成のすすめ

こんにちは、やなべです。

川端康成の小説を読み始めたのは、ブログを書くにあたり、きれいな日本語に触れることが必要だと思ったことがきっかけです。美しいものは、それがなぜ美しいのかという説明は要らずに、ただ美しいと分かるものだと思うのですが、まさに川端康成の文章は何がというよりは、「ただただ美しい」のです。このきれいな日本語から生みだされるのは、ダイナミックな情景描写です。まるで映画を見ているかのように、「言葉から景色が思い浮かぶ」という体験をすることができます。今回のおすすめ作品は、私がとくにこの情景描写に感動したものばかりです。あらすじでは伝わらないところなので、ぜひ原文を読むことをおすすめします。

雪国

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。という有名なフレーズから始まる長編小説です。親の遺産で暮らす、妻子持ちの島村は、懇意にしている駒子という芸者に会うために定期的に雪国を訪れます。また、雪国に向かう列車に居合わせた葉子という女性にも島村は心惹かれていきます。島村の目線を通して、縁があって雪国に暮らすふたりの女性の生き様を描いていきます。そのため、女性たちの日常は作品には登場しないので、読者は島村の見た彼女たちの様子から関係性を想像しながら読み進めることになります。

古都

千重子は、京都にある老舗呉服屋の娘です。彼女にはある出生の秘密があり、現在の両親は育ての親なのでした。とあるきっかけで、千重子は生き別れの双子の妹である苗子に出会います。苗子は林業を営む家に奉公に出ていました。そこから二人の交流が始まるのですが、苗子は千重子との身分の違いを意識してしまいます。この作品では、京都の行事や有名どころの風景が表現されており、京都に行ったことのある人ならば、自分の記憶と交えながら読むことができます。まるで京都の観光案内のように、四季折々の風景を垣間見ながら物語は進んでいきます。

山の音

東京の会社で重役をつとめる信吾と、その家族の物語です。息子は不倫をし、娘は出戻りをするという問題のある家庭のように思われますが、これらの人物の日常の何気ないやり取りの中にそれぞれの関係性があり、何が悪いのかとは言い切れないところが、この作品の奥深さだと思います。そして、信吾自身が老化していく描写から、この家族がこれからどうなるのか、今の束の間の平和を感じさせる、不気味さも持ち合わせています。信吾の住んでいる鎌倉の景色を織り交ぜながら、戦後の家族の日常を描いた作品でした。

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